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DXの本質は“効率化”ではない。価値を生む「時間の再配分」とは
目次
DXというと、「効率化」や「生産性向上」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、それだけではDXの価値を十分に捉えているとは言えません。重要なのは、削減した時間をどう使い、どんな価値を生み出すかです。
本記事では、すかいらーくのシフト管理改革を例に、DXを「時間の再配分」として捉える視点を解説します。
キーワードは、「現場DX」と「価値を生む時間」。DXの成果が見えにくいと感じている企業にとって、重要なヒントとなるはずです。
今回は、公開済みのすかいらーく様のインタビュー記事から、一部を抜粋してお届けする第2回です。
現場DXを推進するリーダーはどう育つのか
~すかいらーくDX担当者が語る、実践型「DXリーダーズプログラム」とアルムナイコミュニティの価値~
DXはなぜ「効率化」だけでは語れないのか
DXの効果を語る際、よく使われる言葉があります。効率化、省人化、工数削減、生産性向上—いずれも重要な観点です。しかし、それだけではDXの価値を十分に表すことはできません。
すかいらーくの取り組みで印象的なのは、「DXとは時間の使い方を変えること」という考え方です。単に業務を減らすのではなく、時間の使い方そのものを再設計する。この視点に立つことで、DXの意味は大きく変わります。
店長業務の改革が示した「時間の再配分」
その象徴が、シフト管理の見直しでした。
店舗運営における店長業務は、大きく3つに分かれます。「人の管理」「物の管理」「お金の管理」です。中でも特に工数がかかっていたのが、「人の管理」でした。
休み希望や勤務調整の申請は紙でやりとりされ、店長の机に集まる。
受け取った・受け取っていない、なくした・見ていない、といった行き違いが発生する。
完成したシフトも紙のため、確認には店舗に来る必要がある。
こうした業務は、多くの現場で長く当たり前とされてきました。しかし、当たり前であることと、最適であることは別です。
そこで、すかいらーくではシフト申請から確認までをスマートフォンで完結できる仕組みへと移行しました。これにより、店長やマネージャーの事務作業は大幅に削減されました。
DXとは「価値を生む時間」を増やすこと
ただし、重要なのはその先です。工数が減ったからといって、人を減らせばよいわけではありません。三品様が見ていたのは、「その時間を何に使うか」でした。
事務作業に使っていた時間を、
接客
清掃
人材育成
といった、より価値の高い仕事に振り向ける。ここにDXの本質があります。
外食産業の価値は、最終的には「人」が生み出します。料理を提供することも、店舗を清潔に保つことも、スタッフを育てることも、人の仕事です。だからこそ、DXの役割は人を不要にすることではありません。
人が価値を発揮する時間を増やすことにあるのです。DXとは単なる効率化ではなく、時間の再配分です。この視点に立つと、DXの評価軸も変わります。システムを導入したかどうかではなく、生まれた時間がどこに使われたのかが重要になります。
現場に生まれた余白は、顧客価値の向上につながったのか。人材育成に活用されたのか。こうした問いこそが、DXの本質に近い評価軸です。
実践を通じて「時間設計力」を身につける
DXを“導入した技術”で語るのではなく、“取り戻した時間”で語る。この視点は、多くの企業にとって大きな示唆になります。そして、この「時間の再配分」を構造的に設計できるかどうかが、DX推進の成否を分けます。
パソナデジタルアカデミーのリーダーズプログラムでは、DXの概念理解にとどまらず、
サービスデザイン
ビジネスアーキテクチャ設計
データ活用
といった要素を体系的に学びながら、自社課題に対するDXプランを構築します。
さらに、プランの発表とフィードバックを通じて、実行可能な形へとブラッシュアップしていきます。このプロセスを通じて、DXは単なる効率化ではなく、「価値創出のための時間設計」であるという理解が、実務レベルで定着していきます。
すかいらーくの事例が示すように、DXの成否を分けるのはツールではありません。時間の使い方を再設計できるかどうかです。その視点を持つリーダーをどう育てるか。それが、これからの企業にとって重要なテーマになっていきます。
DX人材育成につながる、“やることを増やさないDX”とは
DXを前に進めるためには、新しい取り組みを“追加するのではなく、既存の業務や時間の使い方を再設計することが不可欠です。そしてそのプロセス自体が、DX人材育成の実践の場になるという点も見逃せません。業務を見直し、何をやめるかを判断し、限られたリソースの中で変革を進めていく。この経験こそが、DXを推進できる人材を育てていきます。
パソナデジタルアカデミーのDXリーダーズプログラムでは、ワークショップ形式での実践を通じて、自社の業務構造やビジネスモデルそのものを見直し、変革のシナリオを具体化していきます。
さらに、約3ヶ月にわたる継続的な学びの中で、構想だけでなく「実行につながるアウトプット」を重視している点も特徴です。
“やることを増やすDX”から脱却しながら、実践を通じてDX人材を育てていきたい方は、ぜひご確認ください。
■編集後記
DXという言葉が広がるほどに、その意味は「効率化」に寄っていきがちです。しかし本来のDXは、その先にあるはずです。
今回のテーマである「時間の再配分」は、シンプルでありながら、本質的な問いです。削減した時間をどう使うのか。その意思決定にこそ、企業の価値観が表れます。
現場に生まれた余白を、コスト削減に使うのか。それとも、顧客価値や人材育成に投資するのか。DXはテクノロジーの話ではなく、「時間の使い方の哲学」なのかもしれません。