特集記事
DXリーダーズプログラム
日本触媒のDX戦略と人財育成の取り組み ― 「TechnoAmenity for the future」の実現に向けて ~体験型DX人材育成「DXリーダーズプログラム」~

目次
日本触媒様は「TechnoAmenity ~私たちはテクノロジーをもって人と社会に豊かさと快適さを提供します」を企業理念に掲げ、持続可能な社会の実現を目指し事業に取り組まれています。長期ビジョン「TechnoAmenity for the future」では、環境・エネルギー課題への貢献、社会課題解決型ビジネスの展開、グローバル展開の強化、収益構造の転換を推進。DXは経営基盤強化とイノベーション創出の柱と位置づけています。
今回は、DX推進に対する戦略や方針、DX人財育成などについて、DX推進本部DX推進部部長の大田晋一 氏にお話を伺いました。

株式会社日本触媒
事業内容:化学製品の製造・販売
従業員数:連結:4,685名 単体:2,541名 (2025年3月末)
取材対応:DX推進本部DX推進部 部長 大田 晋一 氏
独自技術で化学素材をグローバルに供給するメーカー。高付加価値の「ソリューションズ製品」でさらなる成長を目指す
―はじめに、事業内容や特徴を教えてください。
大田氏:
当社は1941年に大阪府で創業し、現在は大阪本社と東京本社を構えており、吹田に研究拠点・姫路と川崎に製造拠点を持つ化学メーカーです。
独自技術を活かし、主にアクリル酸や酸化エチレンといった高品質な化学素材などを製造・販売しています。特に、アクリル酸を応用した高吸水性樹脂は紙おむつの吸収材として世界トップシェアを数十年にわたり維持しており、高い競争力を持っています。
新たに電気自動車などに使用されるリチウムイオン電池の材料を生産するための新工場建設を進めており、3年後の操業を目指しています。今後は「ソリューションズ製品」と呼ばれる高付加価値製品に注力し、2030年度までにマテリアルズとソリューションズの売上構成比を50:50にすることを目標に掲げています。ポートフォリオの変革により、持続的な成長を目指しています。
人財不足と技術競争への対応としてDXを本格始動 ― DXによる未来志向の全社体制と基盤整備の取り組み
―DXに注力されDX方針も作られていますが、DXへの取り組みについて教えてください。
大田氏:
当社では以前からDXに取り組む意識はありましたが、本格的に動き出したのは2021年頃です。2022年春に「DX推進本部」を新設し、その下に「DX推進部」を設置しました。
採用や育成などといった人財確保の難しさと、今後注力するソリューションビジネス推進には人の力だけでなくDXの活用が不可欠という認識がありました。特に研究開発分野では競合も多く、スピード感が求められるためDXの推進は必須でした。
そこで、従来のIT部門とは別に未来志向のDX推進部門を設置しました。研究所内のデータ分析部門には分析・企画機能を担ってもらったり、製造現場には専任のDX部門を設置したりするなど、各業務の領域ごとに、最適な取り組みを進めつつ、本社DX推進部が基盤整備やDX人財育成を担当する体制をとっています。
2022年度から2024年度の3年間はデータ共有基盤の整備を進めるとともに、DX人財の育成にも注力しました。進行していく中で現場のリソース不足により業務が逼迫していることが判明しました。そこで、各部署の課題を丁寧に聞き解決し、余裕を作る視点でDXによる業務改善に積極的に取り組んでいます。
ビジネス部門から始まるDX変革 ― 「人財育成」が未来を拓く鍵
―更なるDX人材育成など、外部研修の導入に至った背景や課題感をお話いただけますでしょうか?
大田氏:
DX推進において、最も大きな壁となるのが「人財育成」です。特にビジネス部門では、技術的な知識だけでなく、事業全体を俯瞰し、変革を牽引する力が求められます。私たちはこの課題に真正面から向き合い、2022年のDX推進部立ち上げ以降、DX人財育成を企業変革の中心テーマとして位置づけてきました。
しかし、データ分析などのスキルを学ぶ技術部門での育成に比べて、ビジネス部門の育成は後手に回っていたのが実情です。
その時出会ったのが、パソナデジタルアカデミーが実施する、ビジネスアーキテクトに特化した「DXリーダーズプログラム」です。
このプログラムは、単なるスキル習得ではなく、DXの本質を理解し、事業の未来を構想できる人材を育てることを目的としているのが特徴です。
受講者からは、「少人数制で濃密な学びが得られる」「DXの全体像と自社のあり方を俯瞰できる」といった声が多く寄せられ、私たちは第2期以降の本格的に参加しており、今では、ビジネス部門の中核人材が、DX推進の旗手として社内外で活躍し始めています。
もちろん、全社的な育成も並行して進めています。第1階層では全社員向けにDX基礎教育を実施し、第2階層では管理職向けの研修を展開。
さらに第3・第4段階では、R&D部門や生産部門におけるデータ分析人財の育成、デザイン思考やプロジェクトマネジメント研修など、専門性を高める取り組みを体系的に進めています。
やはり私たちが今、最も力を入れているのは、ビジネス部門の変革を担う人材の育成です。技術だけではDXは進みません。事業を理解し、未来を描き、組織を動かす「人」の力こそが、DX成功の鍵なのです。
現場主導のDX推進へ ― ビジネスアーキテクトを育成し、DX人材を現場に配置

―「DXリーダーズプログラム」をご利用頂いたのは、各部門と全体の最適化に必要なビジネスアーキテクトを育成することが目的といえるでしょうか。
大田氏:
これまではIT統括部が中央集約的にシステム運用を担い、現場ではExcelのマクロ程度の利用にとどまっていましたが、DXを進める中で現場の社員が自らデジタル活用を考える意識や準備が不足していることが課題として見えてきました。
そこで現場にデジタル素養を持つ人材を早急に育成し、現場でDXを推進できるビジネスアーキテクトを育てる必要があると考えました。
パソナデジタルアカデミーの「DXリーダーズプログラム」は、ビジネスアーキテクトを育成するという目的に合致した新しいタイプの研修であると感じ、参加を決めました。ビジネスアーキテクトを増やしていくことが、現場のDX推進力強化の重要な施策の中心になっています。
視野が広がり、自信が芽生える ― 「DXリーダーズプログラム」がもたらす人材の変化
―参加メンバーや社内の方が感じている、参加して良かったポイントや変わった点や感想を教えてください。
大田氏:
これまでに5名の社員が、「DXリーダーズプログラム」に参加しました。最初の2名は研究部門から指名し、「技術に強いだけでなく、ビジネスの視点を持つ人材を育てたい」という明確な方針のもとで選出しました。
2人ともデジタルへの関心は高かったものの、ビジネス視点で物事を考える経験は少なく、受講後には「視野が広がった」「会社全体を俯瞰して考えられるようになった」といった声が聞かれました。
特に印象的だったのは、異業種の参加者との交流を通じて、多様な視点に触れたことが大きな刺激になったという点です。専門分野に閉じこもるのではなく、組織全体の未来を描く力が養われたことは、まさにこのプログラムの醍醐味だと感じています。
続く第3期・第4期への参加は、社内公募によって事業部門や管理部門から参加者を募りました。
中には、人前で話すことに苦手意識を持っていた社員もいましたが、プログラムの後半に取り組む「DXプラン」の発表までの学びや経験を通じて自信を持って話せるようになり、「話すことへの抵抗がなくなった」と語るほどの成長を遂げました。こうした変化を目の当たりにするたびに、「DXリーダーズプログラム」の価値を実感します。
単なる知識習得ではなく、「自分が会社を変えていく」という意識と行動力を育てる場になっているのです。
社員一人ひとりの変化が、組織全体の変革につながっていく ― その手応えを、私たちは確かに感じています。
DX人財の継続育成へ ― 社内施策と「DXリーダーズプログラム」活用の両輪で進めるDX人財育成
―最後に、今後のDX人財育成に関する方針や計画的を教えてください。
大田氏:
DX推進に取り組み始めて3年が経過し、当初からのDX人財育成カリキュラムの見直しが必要と感じています。
ビジネスアーキテクト的な視点や経産省のデジタル人材類型化などを踏まえ、従来の内容だけでは対応が難しい部分もあり、柔軟に対応しつつ、当社にマッチしたDX人財育成を続ける必要があります。
パソナデジタルアカデミーの「DXリーダーズプログラム」は、当社のDX推進をリードするビジネスアーキテクトを増やして行く中で非常に効果的な施策と捉えており、今後も社内施策と組み合わせて継続的に活用していきたいと考えています。
編集後記
社内DX推進を進める中で、従来のIT部門主導によるシステム運用から、各部門における最適化を図るDXの取り組みへと舵を切られた日本触媒様。その過程で、DXをリードする人材の不足が課題となり、「ビジネスアーキテクト」と呼ばれる人材の育成に注力されました。
そうした背景のもと、パソナデジタルアカデミーの「DXリーダーズプログラム」をご活用いただき、ビジネスアーキテクトの育成に成功されています。
各部門最適と全社最適の両立を図りながらDXを推進される日本触媒様の取り組みは、ビジネスアーキテクトやDXリーダーの重要性を社内外に改めて示す好例といえるでしょう。
\ DXリーダーズプログラムについてもっと知りたい方 /
■編集後記
DXご担当者様とお話しをするとき、「自社のDX人材に求められる素養は何か?と模索中です」というお声をよくいただきます。パソナデジタルアカデミーではDX推進に関してお役に立てるご支援をご用意していますので、お気軽にお問い合わせください!