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DXリーダーズプログラム
DX化による事業成長を目指す大林道路~建設DXで人材育成と業務改善に取り組む~
目次
大林道路様は、DXを業務効率化だけでなく、現場の業務改善と人材育成の一環として推進しています。デジタル技術を活用した業務プロセスへの改善により持続可能な社会インフラの実現を目指しています
本稿では、DXソリューション部 部長の佐藤正憲氏に戦略と現場の変化、今後の展望を伺いました。

事業内容:舗装工事・土木工事・その建設工事、関連製品の販売等
従業員数:1,094名(2025年3月31日現在)
取材対応:DXソリューション部 部長 佐藤 正憲 氏
建設DXで現場改革を推進 ~熟練の知恵とデジタル技術で課題解決への取り組み~
―はじめに、御社の事業について教えてください。
佐藤氏:
当社は大林グループの一員として1933年に創業しました。道路舗装工事を中心に事業を展開しています。建物が完成した後の駐車場や排水施設などの外構工事も多く手掛けており、売上全体の割合ですが、舗装工事と建築外構関連工事が各4割程度、残り約2割が製品販売となっています。
製品販売についてですが、全国に41か所のアスファルト混合物製造拠点を保有しており、舗装工事に必要な材料を自社で製造しており、製造から施工まで一気通貫で品質管理に取り組んでいます。
近年では、再生可能エネルギー関連施設整備と、老朽化した管路の補修事業なども力を入れて取り組んでいます。
―では、DXへの取り組みやポイントを教えてください。
佐藤氏:
建設・土木の現場では「経験と勘」が重視され、一人前の土木技術者となるためには相応の時間がかかると考えられていました。しかし近年、「2024年問題」などを背景に、生産性向上と働き方改革が急務となっています。
当社では、単なるIT導入ではなく、仕事の進め方そのものを見直すことをDXの中心に据えています。現場で培われた知恵とデジタル技術を融合し、建設生産プロセスを改善することが狙いです。
特に、多くの人手を要していた業務の改善、知識や技術の属人化、紙ベースでの情報共有などの課題をDXによって体系的に改善することで、新しい働き方の実現を目指しています。
―次に、現場での経験や勘が重視される建設業界でDXを進める背景を教えてください。
佐藤氏:
建設業界でDXを進める背景には三つの目的があると考えています。
一つ目は「生産性向上」です。ICT技術およびIoTデバイスの活用により、現場におけるデジタルデータの取得ハードルが下がってきたことから、クラウドを介しての情報共有、書類作成業務時間の削減が可能となりました。
二つ目は「品質と安全性の確保」です。機械稼働や作業環境を可視化し、過去の知見をもとに事故発生リスクの低減対策を行うことが可能です。
三つ目は「働き方改革」です。クラウドを介してのデータ共有環境を整えることにより、遠隔から進捗確認や情報共有が可能となることで、長時間労働の抑制や社員個々の負担軽減につながります。
これらを継続して取り組む文化が醸成され、当たり前に利用している環境となった暁には、当社の業務は大きく改善されていると考えています。
「現場発想型DX人材」で業務効率と品質向上へ ~現場の知恵とデジタルで組織改革~
―DX人材の育成方針について、どのように考えていらっしゃいますか?
佐藤氏:
当社では、単にITスキルがあるだけでなく、施工現場や管理部門での経験を活かしながらデジタル技術の活用ができる人材を育てたいと考えています。現場課題を理解し、改善提案ができる『現場発想型DX人材』の育成を重視しています。
建設DXを牽引する人材育成に外部研修を活用 ~DXスキルを体系的に身につけ、高まる課題解決力~

―外部のDX研修を導入しようと考えたきっかけは何でしょうか?
佐藤氏:
外部のDX研修を導入したきっかけは、社内だけでは体系的にDXの知識や手法を学ぶ機会が限られていたためです。社員の多くは現場経験が豊富で実務には強い一方、データ分析やデジタル技術の活用についての理解が不足していました。
そのため、外部の実績ある研修を通じて、DX推進に必要な基本的な考え方や標準的なフレームワークを学び、現場の課題解決に活かせる力を身につけることを目的として導入しました。さらに、社外のDX専門家から最新のデジタル技術や他業界の事例を学ぶことが、視野を広げて発想力を豊かにすると考えています。
―その中で、パソナデジタルアカデミーを選ばれたポイントはどこでしょうか?
佐藤氏:
パソナデジタルアカデミーさんの「DXリーダープログラム」を選んだ理由は、DXに関連する基礎知識の習得と現場課題の解決のフレームワークを学ぶことができることでした。また、数日間の研修ではなく3ヶ月間にわたる研修であったため、頭の中には常に研修のことが残っていながら定常業務を行うことにより、自身の業務における新たな気づきを得ることが出来るのではないかと感じました。
また、土曜日、平日の夕方以降など、本来は業務時間外となるスケジュールは本人の自主性(自身が学びたいと考える気持ち)が結果に大きく影響することから、このプログラムを真摯に取り組むことができる人材は当社にとっても重要となると考えたからです。
また、受講者一人ひとりに伴走するサポート体制が整っており、学んだ知識をそのまま業務に落とし込める点も大きな魅力でした。DXを「学ぶ」だけでなく「現場で使える力」として定着させられるプログラムだったことが、最終的な決め手です。
―実際にDXリーダープログラム研修を受けた社員や関係者の反応はいかがでしたか?
佐藤氏:
DXリーダープログラムに参加した社員は、業務改善にデジタルをどう活かせるか、自身で具体的に考えられるようになったと感じています。現場経験が豊富なだけではDXを進めることができず、このような研修をとおしてデータの見える化やプロセス改善の手法を体系的に学ぶことは自部門の課題を整理し、改善策を提案する能力を養うために必要であると他のメンバーも感じています。
また、受講後には現場での提案や改善活動が活発になり、上長や同僚からも業務に対する取り組み方が少しずつ変化していることが評価されています。研修への参加は1名でしたが、当事者自身だけでなく組織全体にも良い影響をもたらしていると感じています。
人材育成と事業成長を両立するDX推進 ~DX推進で個と組織の力を引き出し、常に改善し続ける組織を実現~
―DXを通じて、現場や社員にどのような変化が生まれるとお考えですか?
佐藤氏:
DXは単なる業務改善の手段ではなく、社員一人ひとりの働きやすさや成長を支える基盤として位置づけています。デジタル化により、個々の業務の効率化や負担軽減が進むことで、社員でなければ出来ない業務にシフトすることでイノベーションが起きやすい環境になると考えています。これにより、チーム全体で課題を解決する文化や風土が生まれると思います。
社員が自らの成長を実感し、前向きに働ける環境を整えることがDX推進の根幹と考えており、その積み重ねが組織全体の活力を生み、結果的に「この会社で働き続けたい」と思える魅力的な職場づくりにもつながるのではないかと考えています。
―これからのDX化の展望について教えてください。
佐藤氏:
今後は、業務プロセスにAIを活用するステージから、どれだけ自律的にAIが業務をできる環境を構築できるかが重要になってくると考えています。計画の自動化や、リスク予測の精度向上のために、現場で蓄積されるデータや技能情報を体系的に活用し、若手技術者の教育やスキル継承の効率化にもつなげていきたいと思います。
さらに、ICTやBIM/CIMの活用を進める一方でシームレスなデータ連携と共有が可能な基盤を整備することで、当社が施工する全国各地どの現場でも同じ管理水準を保てる体制を構築していく予定です。
建設現場にはまだアナログな部分が多く残っていますが、デジタル技術の力で現場の働き方や管理方法を根本から変えていくことが、私たち大林道路の目指すDXの姿です。DXは技術導入にとどまらず、「人がより安心して成長できる現場づくり」につなげていくことが重要であると考えています。
■編集後記
大林道路様は、建設業のDX推進を通じて業務効率化だけでなく、現場の安全性向上と人材育成を強化しています。パソナデジタルアカデミーの「DXリーダーズプログラム」を活用し、現場発想で改善提案ができる建設DX人材の育成にも注力されています。
大林道路様のAIやBIM/CIMを活用したDX化の取り組みは、建設DXのモデルケースとして注目されています。
ビジネスアーキテクト人材育成「DXリーダーズプログラム」
パソナグループは、DXは単なる技術的な挑戦ではなく、全ての働く人々に「もの創りや協働の楽しさやワクワク感」をもたらす革新的な方法論だと考えています。このビジョンを実現するため、技術とニーズを結び付け、新しい価値をデザインする企業間交流型プログラム「DXリーダーズプログラム」を開催しています。
DXリーダーズプログラムでは、自社のビジネスや組織を変革に導けるリーダー人材を育成します。ビジネスアーキテクチャーデザイン、ファシリテーション、リーダーシップ、生成AI・データ活用といった、DXをリードする存在に欠かせないスキルを網羅したカリキュラムです。ビジネスアーキテクトの育成としてもご活用いただけます。
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