特集記事
ファシリテーターに聞く!
DXビギナーズプログラムにしかない魅力
DXを実現していくために必要なマインドや考え方は、経験を通じてこそ身につけることができます。DXビギナーズプログラムでは、ユーザーの本質的な課題を見極め、様々な解決アイデアを模索し、実際にプロトタイプを作成しながらより良い解決策を練り上げるプロセスを体験頂きます。DXを実現するために必要な思考法を体感しながら身につけて頂ける2日間の対面研修です。
当プログラムでは、座学で理解した内容を「実践できる」につなげるために、少人数のチームでアウトプットしながら学ぶ体験型のワークショップ形式を採用しています。パソナグループのDX統括本部のメンバーが、ファシリテーターとして関わりながら学びをサポートします。
「ファシリテーターに聞く!」シリーズでは、ファシリテーターである藤原さん・杉田さん・田部さんにインタビュー。当プログラムでの学びや特徴を教えていただきました。
今回は、他のDX研修との決定的な違いについてレポートします。
DXを前進させるために必要な力は、「体験」してこそ身につく
―DXビギナーズプログラムは、DXに必要な思考法を体験する研修です。なぜ人材会社であるパソナグループが提供しているのですか?
田部:デジタル化の波を受け、私たちのメイン事業である人材サービスもビジネス環境が大きく変容してくるなか、DX人材の不足が多くの企業の共通課題となってきました。2021年からパソナグループは社内外でDXを牽引できるリーダー人材の育成を始め、同年にDX認定を取得しました。
リーダー育成研修は毎年実施していますが、毎期の最後には必ず、自分たちの業務課題を改善するアプリを作成します。研修で生まれたアプリは実際に社内でも使われており、研修を重ねるごとに徐々に業務の進め方が変革してきました。
受講するすべての社員が、アプリにより改善したい業務課題を受講前から持っているとは限りません。研修中に、ユーザーに共感し潜在的な課題を探る重要性を学んだからこそ、社内で必要とされるサービスを研修の最後に作り上げられるのです。
藤原:当社で経験してきたからこそ、デジタルを使いこなすことよりも先に、課題が何かを見極める力を身に付けることがDXには不可欠だとわかりました。リーダー育成研修のなかの1コマである課題発見力を養う講義が、DXを推進するうえで一番のキーポイントになると実感したので、内容をカスタマイズし、DXビギナーズプログラムとして提供しています。
―社内の研修がこのプログラムのルーツなのですね。DXビギナーズプログラムならではの魅力を教えてください。
藤原:講師からの一方的な講義とは異なり、私たちファシリテーターが、参加者の皆さんが自ら気付きを得ていただけるように、コミュニケーションを取りながらワークショップを進行します。「教育」ではなく「学習」という考え方を大切にしています。
体験を通して自身が学び取ったことは記憶に残りやすく、業務での再現性が高くなります。2日間のほとんどをワークショップに費やす点は、このような思考法の研修では他にないと思います。
1人で学び取るのではなくグループワークを重ねるからこそ、新しい視点も持ちながら課題に向き合えますし、ファシリテーターが介在するところは、私たちの強みです。
―体験しながら学ぶところへこだわる理由を教えてください。
藤原:思考法は抽象的なものであるため、講義や読書で知識をインプットするよりも、体験を通して学ぶ方がより記憶が定着し、実務でも学びを再現できるためです。一般的にも知られるラーニングピラミッドという、学習方法と学習定着率(=記憶が保持される程度)の関係を表した図が下記です。
学習者が実際に手を動かして活動することで、情報は強く記憶に残り、理解が深まります。思考法を学ぶ際、自ら問題を解決し講師や周りの学習者からフィードバックを得ることで、抽象的な概念から具体的なイメージを持つことができ、実践的な知識になります。
田部:パソナグループでも、e-ラーニングを活用して4・5年目社員を対象にITパスポート取得を目指す研修を行ったことがありました。当時の合格率は芳しくなく、合格者の輩出に大変苦戦していました。
そこで次年度の研修では、仲間と一緒に学ぶ場を作り、インプット(講義・自己学習)とアウトプット(グループ内での学習ノウハウの共有)を繰り返す学習方法に切り替えたことで、合格者を166%に増加できました。これまでの経験で、自ら手を動かして学ぶことの重要性を実感してきたため、体験型のワークショップ研修にこだわってプログラムを作っています。
ファシリテーターの役割は「教える」ではない
―ファシリテーターとの関わりながらワークショップを進めるとのことですが、ファシリテーターとはどのような役割があるのですか?
藤原:講師とは異なり「教える」ではなく、問いかけやコミュニケーションを通して、参加者の皆さん自身が、プログラムで獲得いただきたい学びに気付けるようサポートする役割があります。
私はメインファシリテーターを務めます。まず研修実施前の段階では、参加者の皆さんがどんな期待感を持って研修に参加してくれるのか、研修を企画する側(人事やDX部門)は研修を通じてどんなメッセージを伝えたいのかを、必ずお伺いします。その思いに乗せて、私たちのプログラムを提供させていただきます。
研修時に徹底していることは、答えや解決策は伝えないという点です。「どうすればいいだろうか」と参加者自らが気付けるように、なぜそのアイデアに至ったのか・ユーザー目線を忘れていないかなど、ワークショップ中に参加者の皆さんに投げかけています。
―サブファシリテーターはいかがでしょう?
田部:各テーブルに1名ずつ付くサブファシリテーターの役割は、参加者の皆さんがワークショップを通して本質的な学びや気づきが深まるようにサポートすることです。ワークショップ中に皆さんの発言量に偏りが出ないような、気兼ねなくコミュニケーションを交わしやすい場づくりを心掛けています。
サブファシリテーターは普段エンジニアをしている社員ですので、ユーザー視点での課題解決プロセスをどう業務に活かしているかというエッセンスをお伝えしています。またアプリ作成体験でもしっかりサポートさせていただくので、技術面の心配はご無用です!
杉田:私は、皆さん同士の交流を最大限引き出そうと思って接しています。デジタルの世界で一番大事なのは「人と話す」とか、実はアナログなことなのです。ペルソナである私をチーム内の話のネタとして使っていただけるよう、接しやすいキャラクターで関わる点は大切にしています。
ユーザー視点でのサービスデザインプロセスを体感いただくのがプログラムの趣旨です。ユーザーは1人の人間なので「人対人」で向き合う感覚を大切に、自然体でユーザーインタビューに答えています。
―ファシリテーターについて、参加者の皆さんは実際どのような印象をお持ちでしょうか?
田部:「各グループに専属の担当が付くことで、技術的な疑問点などを迅速に解決でき、研修の本質であるユーザー視点での課題発見や価値創造の検討に専念できた」という声をいただきます。研修効果を高めるために私たちはいるので、その役割を発揮できていると思うと嬉しいです。
杉田:ファシリテーターのサポートが“程よい”点は毎回ご評価いただいているポイントです。「ワーク中には答えを出すのではなく質問の投げかけを繰り返してくれました。軌道修正・議論がまとまるようにヒントを出すのみで、チームの考えに寄り添って頂けたので自分たちで解決策を導くことができた」という感想もありました。学びの主体は参加者の皆さんであるよう、いつも心掛けています。
まとめ
DXビギナーズプログラムは、これまでパソナグループが培ってきたノウハウがたくさん詰まっており、効果があると社内で実証されてきたからこそ、外部向けに展開しているのだとわかりました。
研修で学んだ思考法は、実業務でどのように発揮されるのでしょうか。次回は「研修の学びが現場実務にどう繋がるか」についてインタビューします。