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「DX動向2025」とは?日本企業のDXの現状と課題をわかりやすく解説

日本企業のDXは2020年以降コロナ禍が転機となり本格化してきました。2025年現在の、日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、AIやクラウド活用が進みつつも、人材育成や文化改革が今後の課題と言われています。

この記事では、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が2025年6月26日に公表した報告書 「DX動向2025」の内容である「1. DX取組と成果の状況」「2. 技術利活用の状況」「3. DXを推進する人材」の3つの視点から、現状と課題をわかりやすく解説します。

1.DX取組と成果の状況

日本企業のDXは、2018年に経済産業省が「2025年の崖」を提起して以降、着実に関心と投資が高まってきました。当初は「PoC(概念実証)をやってみる」という段階にとどまっていましたが、2025年の現在では「事業戦略と一体でDXをどう位置づけるか」という視点が強まっている状況です。

つまり、DXは単なるIT導入ではなく、経営の根幹に組み込まれるべき、非常に重要な要素となっています。

しかし、投資や施策の広がりに比べて「成果の可視化」は遅れているのが現状であり、多くの企業では「効率化」「コスト削減」などの短期的成果が重視されがちで、DXによる顧客価値創造や新規ビジネスモデルの構築といった中長期のKGIに直結する指標設計が不十分といえるでしょう。

デジタルガバナンス・コード3.0やDX推進指標は、成果指標の設定・開示を経営の責務と位置づけていますが、これを実際に経営判断に活かせている企業はまだ少数派にとどまっています。

このような状況の中、「技術を導入すればDX」というあやまった認識は薄れてきているといえます。最近では「データ活用を通じて顧客体験を高める」「新規サービスを創出する」といった視点で成果を定義する企業が増えてきました。

しかし、こうした定義を人事評価や予算プロセスに結びつけることには依然として課題はあるといえ、成果を測る仕組みを整備することにより、DXの持続可能性を高めていく必要があるといえる状況です。

2.技術利活用の状況

DXを実現するためには、先端技術の利活用が不可欠です。ここではDXを実現するための要素として「アジャイル・DevOps」「データ活用・生成AI」「レガシー刷新」「内製化」という4つのテーマで現状を整理します。

アジャイル・DevOps

アジャイルやDevOpsはソフトウェア開発の効率化と品質向上を目指すための手法として広く知られています。現状では従来のウォーターフォール型開発が根強い中で、アジャイル開発は部分導入が広がり、ある調査によると約4割の企業が一部で導入しているといわれています。

スピードや柔軟性の向上を狙ったものですが、契約スキームや標準化、自動化の整備が追いつかず、「アジャイルもどき」に終わっている例も少なくないのが現状です。

現場が即座に変化へ対応できる体制を築くには、開発プロセスだけでなく、調達や品質保証、ガバナンス全体の変革が必要といわれています。

データ活用・生成AI

DXにおいてデータの利活用は部分的な活用にとどまり、経営全体をデータドリブンで運営するまでには至っていないのが現状です。そのような中でも、生成AIは2023年以降急速に浸透し、試行から限定的本番利用へと移行しつつあるといえるでしょう。

社内ルールを整備して活用を始める企業は増えてきましたが、RAG(検索拡張生成)やエージェント型*の応用など高度活用はまだ先進企業に留まっています。生成AIを生産性向上の補助ツールにとどめず、業務やサービスの本流に、いかに取り組めるかが次の焦点になってきています。

*エージェント型:AI自体が指示待ちではなく、自ら目的達成のために判断・実行する仕組みを持つタイプのAI。例えば、Excelファイルの集計、AIによる議事録の作成、オンラインで最新情報を調べてレポートにまとめるなど、複数の作業を自動でこなすことができる。

レガシー刷新

長年の課題であるレガシーシステム刷新は、依然として日本企業の大きなハードルとして残っています。属人化や技術的負債、保守コストの増大は企業競争力にマイナスの影響をあたえかねないといえます。

段階的なリホストやリプラットフォーム、機能単位の再設計などを進める企業は増えてきていますが、資産の可視化や優先度づけを十分に行わないと刷新は期待通りには進みません。単なる技術移行にとどまらず、業務プロセスの標準化と同時に進めることが重要だといえるでしょう。

内製化

システム開発の内製化を進める企業は増加してきており、ある調査では約半数が内製化に取り組んでいるといわれています。内製化する目的はスピードと知識の社内定着にありますが、各企業は人材不足、技術更新への対応、標準化の欠如といった課題に直面しています。

特にSRE(Site Reliability Engineering)やセキュリティ対応を含めた「内製の経営」をどう確立するかが、今後の内製化を成功させるための重要なポイントとなっています。

3.DXを推進する人材

DXの実現に欠かせないのがDX人材です。ここでは、DX人材の現状について「量」「質」「文化」の3つの課題についてご紹介していきます。

量:慢性的な不足

ビジネスアーキテクトと呼ばれるDXを推進する人材には、企画、アーキテクト、データ/AI、セキュリティ、プロダクトマネジメントなど幅広いスキルが求められています。
しかし、こうした横断型スキルを持つビジネスアーキテクトは慢性的に不足しており、外部調達に依存している企業が多いのが現状です。DX人材の採用・育成・外部連携を組み合わせた人材ポートフォリオ戦略が重要なポイントになっています。

\ ビジネスアーキテクトとは? /

質:橋渡し人材の欠如

「技術と事業をつなぐ人材」の不足が大きな課題となっています。ビジネスアーキテクトやプロダクトマネージャーといった役割は重要視されていますが、各企業ともに、十分な人材の確保が出来ていないといわれています。
経営層が関与して戦略的にDX人材育成を行い、職種定義、評価・報酬、学習機会を連動させる仕組みづくりが急務と言われています。

文化・風土:挑戦と学習の不足

DXを進めるためには、DXに関する技術や人材が整うことに加え、企業文化の変化も欠かせません。日本企業では、トップ・経営層からの強力な発信、成果と学びの開示、部門や組織を超えたコラボレーションの制度化などが、文化醸成の鍵となっています。

今後の展望と提言

2025年の時点では、日本企業のDXは「取り組みは広がったが、成果の可視化・レガシー刷新・人材と文化の整備で停滞している」という段階にあるといわれています。DXをさらに進めていくには、以下の点が実務的に重要なポイントになってきます。

1.成果指標を事業KGIと連動させ、先行・遅行KPIを組み合わせて四半期単位で見直す
2.アジャイルやDevOpsを単なる手法として導入するのではなく、契約や品質基準まで含めた「アジリティ経営」に進化させる
3.生成AIを含むデータ活用は、用途選定とルール整備を徹底し、小規模本番から横展開を進める
4.レガシー刷新では、資産棚卸しを起点にビジネス価値とリスクで優先度をつけ、段階的にモダナイゼーションを推進する
5.人材と文化はプロダクト志向の組織づくりを進め、役割定義と評価・報酬・学習を連動させる。トップが成果と学びを社内外に発信し、文化を根付かせる

まとめ

2025年の日本企業のDXは、「どう成果を出し続けるか」「どうDX人材と文化をつくるか」という段階に入っているといわれています。生成AIの台頭、グローバル競争の激化、人口減少など環境変化は厳しさを増す中において、DXの必要性はこれまで以上に明確になったと言えるでしょう。

DXによる成果の可視化、内製化、文化醸成という3つのポイントを成し遂げた企業には、事業に成長や拡大といった競争優位を築くことができるでしょう。

ビジネスアーキテクトを育成「DXリーダーズプログラム」

DX動向2025では、技術と事業をつなぐ人材の不足が課題提起されていました。パソナデジタルアカデミーではビジネスアーキテクトの領域に焦点を当てた研修として、「DXリーダーズプログラム」を提供しています。

このプログラムは、自社のビジネスや組織を変革に導けるリーダー人材育成を目的としています。ビジネスアーキテクチャーデザイン、ファシリテーション、リーダーシップ、生成AI・データ活用といった、DXをリードする存在に欠かせないスキルを網羅したカリキュラムです。異業種交流型での学びにより、多様な価値観を持った他者と新しい価値をデザインする力も磨かれます。

\ DXリーダーズプログラムについてもっと知りたい方 /

■編集後記
DXご担当者様とお話しをするとき、「自社のDX人材に求められる素養は何か?と模索中です」というお声をよくいただきます。パソナデジタルアカデミーではDX推進に関してお役に立てるご支援をご用意していますので、お気軽にお問い合わせください!

パソナデジタルアカデミー編集部

当サイトの執筆者はパソナデジタルアカデミー編集部のメンバーです。DX人材育成を掲げ、社内外で研修を行いながら最新情報を発信し、お役立ち記事を提供しています。また、DX人材育成に関するプログラムの提供を日本全国で積極的に行っています。

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